インテリに物を売る方法~高学歴に信頼されるための営業テクニックとは?

2022年4月15日金曜日

マーケティング

営業テクニック「両面説得」

インテリ、高学歴相手に重要な営業テクニックは「両面説得」です。両面提示法、と呼んでいる人もいます。

何か説得したい事があるときに「説得の意図通りの事だけを言う」方法を「片面説得」と呼び、「説得の意図と逆の事も言う」方法を「両面説得」と呼びます。

たとえば何か商品を売ろうとする時、その商品のメリットだけを訴えるのが「片面説得」です。逆に、デメリットも併せて示すのが「両面説得」です。

なぜ両面説得なのか?

両面説得は、ある説得において、強みだけでなく弱み(弱点)も伝える手法です。

そして、ある検証結果から、弱点を素直に認める方が信頼を得やすいことが分かっています(*1)。

Williamsらは、弁護士の主張のパターンと信頼性について検証を行いました。
その結果、自分の主張の弱点を素直に認める方が結果的に、クライアントから信頼される事が分かりました。

つまり、クライアントからの信頼を得るためには、両面説得が有効ということです。

学歴と何の因果関係があるのか?

「両面説得」は信頼を得やすいトーク術であることは分かりましたが、それと学歴に何の因果関係があるのでしょうか?

ここでは心理学者多湖輝の著書より引用してみたいと思います。

「あるディーラーの販売上の秘訣」

多湖輝の書籍「心理トリック 人を思いのままにあやつる心理法則」に、以下のような記載があります。

私は、あるクルマのディーラーから、おもしろい販売作戦上の秘訣をきいたことがある。それは、客の学歴をそれとなく聞きだしてから、それに応じた売り込み法をとるというものだった。

(中略)

学歴に応じた方法とは、つまり、大学卒ぐらいの高学歴の客に対しては、ある程度、その短所を述べながら、あわせて長所を強調し、学歴の低い客には、長所だけを徹底的に力説する方法である。

(中略)

教育程度の高いものほど、一面的説得には応じにくく、たとえ、説得の意図から見て表面上は逆に思えるような情報だったとしても、ことの両面に触れた説得のほうが、結局は効果があるのである。これは平たく言ってインテリの疑い深さと、自分の判断力への自負に由来するものであろう。

なかなか興味深い経験則ですね。

簡単にまとめると「高学歴には両面説得が有効、低学歴には片面説得が有効」ということです。

実は、本書の中ではこの営業マンの経験則を補強する「アメリカ陸軍情報教育部の実験」も取り上げられています(詳細は後述します)。

営業マンの経験則は、アメリカ陸軍の情報教育部の実験結果とも合致しており、なるほどこの営業マンの手法は正しいらしい、という要旨になっていました。興味がある方は原典の書籍をお読みください。

営業マンはこのテクニックで、系列販売店で最高の売上率を記録しているとのことです。

そして心理学者である多湖輝は、これらの事象から「インテリの疑い深さ」に思い当たっています。

  • 高学歴には両面説得が有効、低学歴には片面説得が有効
  • 教育程度の高い人間は、説得者の意図する方向だけの説得よりも、その意図に反する情報を含めた説得によって、より動かされる
  • インテリは疑い深い

アメリカ陸軍情報教育部の実験

この実験の話は多湖輝の書籍および心理学博士榎本博明の Web 記事に記載がありましたが、その原典がどこなのかは私には分かりませんでした。

ですので多湖輝の言を出典として、要約を以下に記載します。

第二次世界大戦中、アメリカ陸軍は対日本戦の消耗戦に備えて、兵士に「日本との戦争は長期戦となる」という説得工作を行った。

工作前と後で、効果測定のためにアンケートを取っている。
アンケートの質問は「ドイツが降伏してから日本を破るまでどれぐらいかかると思うか?」というもの。

兵士に対して、片面説得と両面説得の 2 グループに分けて工作した。

片面説得グループには、日本人の士気が高いこと、戦線が広いことなど、「長期戦になる」とひたすら訴える内容を伝えた。
一方、両面説得グループには、ドイツ向けの戦力を日本に集中できること、日本の工業力が劣勢であることなど、「早く終わるかもしれない要素」も伝えつつ、片面説得グループに伝えた内容も伝えて「それでも長期戦になる」と訴えた。

説得前は全兵士の 37% が「 18 ヶ月以上かかる」と答えていたが、説得後は片面説得グループ、両面説得グループ、いずれも 59% に増えていた。

学歴別に内訳を見ると、以下の傾向が見られた。
高卒以下の集団は両面説得グループよりも、片面説得グループの方が 15% も多く増加していた。
大卒以上の集団は片面説得グループよりも、両面説得グループの方が 14% も多く増加していた。

このことより、著者は以下の結論付けをしています。

  • 教育程度の高い者ほど、一面的説得には応じにくい。ことの両面に触れた説得が効果がある。
  • インテリの疑い深さと、自分の判断力への自負に由来するものだろう。

両面説得はなぜ低学歴には効果が薄いのか?

多湖輝の言を借りれば「インテリは疑い深い」です。この裏を返せば「低学歴は信じ込みやすい」となります。

信じ込みやすい、疑うことを知らない人には「デメリット」を伝えることが想定以上のマイナス効果となっていると予想できます。

「こういうデメリットはあるけれども……」の段階で「あぁ、そういうマイナス面があるのか。だったら買うのは止めておこう」と購買意欲にブレーキがかかってしまいます。

逆に疑い深いインテリは「デメリットが無いハズがない」と最初から疑ってかかります。値段が安いなら、安い理由があるハズだ。その理由が分かるまでは買わないぞ、という風に考えるでしょう。

デメリットも伝えることで、疑い深いインテリには「十分にメリット・デメリットを比較検討した」という満足感を与えることができます。しかも「素直に弱点を認める」ことで信頼性が増します。

さらに、こう考えることもできるのではないでしょうか。

片面説得を試みて後からデメリットがバレた場合、信頼性はガタガタになります。当然ですね。「都合の悪いことを隠していた」と映ります。

そしてインテリはそのデメリットに気付く可能性が高く、そうでない人にはバレにくい、見抜かれにくいのかもしれません。

これらを総合すると、低学歴の信じ込みやすい層には両面説得のデメリットの部分が勝ってしまうのだと考えられます。

相手に合わせた営業テクニックを選ぶ

これらの事から、以下のような選択が有用だと思います。

  • 高学歴には両面説得
  • 低学歴には片面説得

なぜそうなるのか、本文の内容をまとめると、以下となります。

  • 高学歴は疑い深い傾向がある。低学歴は信じ込みやすい傾向がある
  • 高学歴に両面説得すると、十分に比較検討した満足感を与えることができる
  • 低学歴に両面説得すると、デメリットの部分を信じ込んで購買意欲にブレーキがかかる
  • 高学歴は片面説得で隠しているデメリットに気付きやすい。そのため信頼感を無くす
  • 低学歴は片面説得で隠しているデメリットに気付きにくい

もちろん、これは統計や傾向の話であって、すべての人間に 100% 当てはまる話ではありません。信じ込みやすい高学歴の人だってたくさんいます。

このように使い分ければ確率が高まる、ということでしかありません。

もし明らかに相手の個性が逆だと分かった場合は、学歴に拘らずに相手の性格に応じた説得を用いる必要があります。

■参考

(*1) Williams, K. D., M. Bourgeois and R. T. Croyle (1993), ‘The effects of stealing thunder in criminal and civil trials’, Law and Human Behaviour, 17:597609.

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