結論
大八木監督は、指導方法を「スパルタ」から「心理的安全性」へ変革させ、チームを復活させました。
今回は「心理的安全性」について書いていきます。
2023年、駒大駅伝三冠
2023年の箱根駅伝、駒大が勝利しました。これで駅伝三冠だそうです。
ただの箱根駅伝にわかファンである私は、今年の駒大の強さに圧倒されました。
さて、今回取り上げるのは、その駒大の大八木監督です。
駒大の大八木監督と言えば、監督車から飛ばす檄が名物ですよね。スパルタ指導で有名だったのですが、それでは結果が振るわず、近年では指導の仕方を改めたそうです。
大八木監督は、指導のやり方を「スパルタ」から「心理的安全性」へ変革させ、成功に導きました。
「強豪駒大」は、近年低迷していた
大八木監督が 1995 年に監督に就任して、 1996 年~ 2015 年までの 20 年間で箱根駅伝を優勝 6 回、準優勝 7 回に導いています。まさに「強豪」と呼ぶにふさわしい戦績ですよね。
駒澤大学駅伝戦績(1996年~2015年) | |||
---|---|---|---|
1996 | 12位 | 2006 | 5位 |
1997 | 6位 | 2007 | 7位 |
1998 | 2位 | 2008 | 優勝 |
1999 | 2位 | 2009 | 13位 |
2000 | 優勝 | 2010 | 2位 |
2001 | 2位 | 2011 | 3位 |
2002 | 優勝 | 2012 | 2位 |
2003 | 優勝 | 2013 | 3位 |
2004 | 優勝 | 2014 | 2位 |
2005 | 優勝 | 2015 | 2位 |
しかし 2016 年からの 6 年間は一気に下降線を辿ります。 2018 年には総合 12 位となり、シード落ちまで経験しました。
駒澤大学駅伝戦績(2015年~2019年) | |
---|---|
2015 | 2位 |
2016 | 3位 |
2017 | 9位 |
2018 | 12位 |
2019 | 4位 |
2020 | 8位 |
ここで大八木監督は「今までのやり方では生徒のやる気を引き起こせない」と思うに至り、それまでとやり方を 180
度といっていい程に転換します。
それがすなわち「心理的安全性」を大事にした指導方針への変更です。
今までのやり方を捨てるのは、簡単なことではない
これは誰もができるような事ではありません。 20 年間で 13
回も優勝・準優勝する実績を作った人が、少し結果が出なかったからと言ってやり方を根本的に見直すことができるでしょうか?
2015
年、大八木監督は 57
歳の年です。全日本大学駅伝の連覇が途絶えたのをキッカケに、ガラリと方針を変えます。それまでの「監督の指示が絶対」という指導から「選手との対話や自主性を重視」した指導にしたそうです。
37
歳~ 57
歳で駒大を強豪大学に育て上げ、実績も十分の監督が、敗戦をキッカケに指導方針を変更する。そんな勇気がある人は、なかなかいないでしょう。「今までこれでうまく行ったのだから、これからもうまくいく」「たまたま悪かっただけ」そのようなマインドになるのが普通だと思います。
大八木監督は、しっかりと時代の風を読んで、やり方を新しくアップデートしました。その結果、 2021 年に再び優勝、 2023
年、つまり今年の箱根駅伝も優勝する復活を遂げました。
「やり方を時代に合わせてアップデートする」という勇気は、本当に素晴らしいことだと思います。
変革の必要性
大八木監督は、何かしらチームに違和感を感じたようです。 2021/03/27 の記事では、大八木監督の以下のような言葉が書かれています。
5~6年前くらいに、今までのやり方では無理かなぁと思うようになった
駒大・大八木監督「62歳」何ともエモい指導の神髄 | 東洋経済オンライン
練習風景から覇気のなさを感じた
駒大・大八木監督「62歳」何ともエモい指導の神髄 | 東洋経済オンライン
何か定量的な評価基準があるわけでは無いようですが、長年リーダーを勤めていた経験から「何かしらの違和感を感じる」事ができたのでしょう。
「違和感を感じた時が、変革が必要な時」と言い換えてもいいかもしれません。
経営者もビジネスのリーダーです。もし、何かしら社内の空気に違和感を感じることがあれば、それは自らを変革する必要なタイミングかもしれません。
なぜ「心理的安全性」なのか?
大八木監督が「スパルタ」から「心理的安全性」に変革をして成功したのは、偶然ではありません。
「効果的なチームビルディングには、心理的安全性が大事である」というのが近年の通説となっています。
Google が認めた「心理的安全性」の大事さ
その通説の大本となったのは、 Google の発表だと言われています。
2015 年、 Google
は「効果的なチームづくりには心理的安全性が必要」と発表しました。
詳細は Google のページをご参照いただくとして、要点をピックアップします。
心理的安全性とは、以下の状態を指します。
- 無知、無能、邪魔だと思われないと信じられる状態
- 自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる状態
つまり、お互いの弱い部分をさらけ出すことができる状態の事です。
この状態を作り出すのが、効果的なチームの最も基礎的な部分である、と
Google は記しています。従業員が「心理的安全性」を感じることができると、チームの能率がよりアップするということです。
「心理的安全性」指導への変革
「スパルタ」指導と「心理的安全性」指導では、以下のような違いがあります。
スパルタ | 心理的安全性 | |
---|---|---|
目標設定 | コーチがゴールを定める | 選手の目指す方向性をヒアリングして、ゴール設定を行う |
トレーニング内容 | トップダウンで決定 | 目標達成プランを選手が提案し、コーチはレビュアーとして振る舞う |
目標未達時 | 叱責 | 原因のヒアリング。場合によっては計画の再検討 |
コーチと「相談」しながら選手自身がゴールを定め、コーチと「相談」しながらトレーニング内容を選手自身が決定する。
目標が未達成だった場合は、何かがおかしいのだから何がおかしかったのかを分析する。
決してコーチは、選手を支配しません。選手の自主性を重んじ、選手自身に計画させる事が重要です。
これは、スポーツ(駒大)でもビジネス (Google) でも同じだと言えるでしょう。
このように、スパルタ指導と心理的安全性指導ではコーチと選手との接し方に根本的な違いがあります。かなりドラスティックな変更になるので、コーチ側は変革の勇気が出ないこともあるでしょう。
しかし、時代に合わせて、より効果的なチームを作るためには、変革しなければなりません。
大八木監督は、今までのやり方に固執せず、今の時代に合わせた指導方法へ変革しました。スポーツだけでなく、ビジネスの指導者、つまり経営者も同様に時代に合わせた指導方法へ変革する必要があります。
チームには「心理的安全性」が不可欠
以前、私は「鬼コーチはなぜ流行らないのか?」について書きました。
ここでは「鬼コーチが流行らないのは、成功率が低いからだろう」という推測を書きました。これを今回のテーマに沿って言い換えると「コーチと選手は 1 つのチーム。チームが効果的に働かないから鬼コーチは流行らない」となります。
スポーツであれ、ビジネスであれ、コーチ(上司)と選手(部下)は、チームです。部下の自主性を認めることで、モチベーションが高まります。モチベーションが高まると、仕事に対して当事者意識が芽生えます。当事者意識が芽生えると、言われたことをやるだけではなくて、成功させるためにはどういう手段があるかアイディアを自ら出して、周囲と相談しあうようになります。
それこそが Google の言う「効果的なチーム」です。今や、上司が部下の心理的安全性を確保することは、必要不可欠となりつつあります。
どうやって「心理的安全性」を確保するのか?
ここでは詳細をご説明はしませんが、前述の Google のページを参考に今までとは違うやり方にしてみてください。 Web 上にも、「心理的安全性を確保する方法」が記載されたコンテンツが豊富にありますので、検索してみてください。
重要なのは、経営者が「やり方を変革しなければならない。チームが効果的に働けなければならない」と思い立つことです。その変革の意思こそがもっとも重要です。
そうは言っても、どうすればよいのか?
もし不安な場合は、ビジネスコーチに相談してみてください。
最大 3
ヶ月、無料でコーチングいたします。心理的安全性の確保の仕方だけでなく、アンガーマネージメントや、従業員のモチベーションアップなど、様々なテーマに対応できます。
もしご興味があれば、一度オンラインミーティングでお話してみませんか?
お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。
使用画像
- 駒沢で結ばれた”情熱と信頼”の絆 | 駒澤大学より引用
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