結論
まず、タイトルに対する答えから書きます。ダブルチェックはある程度有効ですが、それほど高い効果は期待できません。
書類の不備=ヒューマンエラーの産物
書類の不備は、ヒューマンエラーにより発生します。ヒューマンエラーを、ヒューマンのチェックで必ず検出する、ということはできません。チェックする側にもヒューマンエラーが発生するからです。
そして、そのチェック作業を長期間継続することで精度は落ちていく、と人間工学的に言われています。つまり「慣れ」が精度低下を生むのです。
不備を防ぎたいならどうすればいいか
ダブルチェックではなく「エラープルーフ化」を推進しましょう。エラープルーフ化は、以下参考サイトに分かりやすい解説が載っています。
この中で触れられていることを抜粋しますと、以下の 5 つが肝要と書かれています。
- 排除
エラーの原因となるものを取り除くこと。たとえば、つまずく可能性がある床の小さい段差をなくすなど。 - 代替化
今まで人が行っていた作業を機械やシステムに代替すること。 - 容易化
作業しやすく、判断しやすくすること。 - 異常検出
異常を速やかに検出して知らせることで、それ以上の被害を防ぐこと。 - 影響緩和
発生したエラーによる問題が、他の箇所に影響して広がらないようにすること
あなたのビジネスにおいても、この 5 つの要素を取り入れられる場所が無いか考えてみてはいかがでしょうか。
- ダブルチェックは効果があるが、高い効果は得られない
- ダブルチェックに慣れてしまうと精度が低下する
- エラープルーフ化に取り組むべき
ダブルチェックはどの程度効くのか?
ダブルチェックは、ミス検出率を最大で 1.6 倍にできます。しかしその効果は長続きしない可能性があります。実験データ
参考までに、電気通信大学の田中健次教授の実験データ(*1)を引用しましょう。上記のページからグラフ画像を引用します(見やすくするために加工しました)。
<引用元:http://www.medsafe.net/specialist/40tanaka.html> |
どういう実験をしたかの説明も引用します。
実験では、複数人が間仕切りのある机に一列に並び、封筒に印刷された宛名などを順に確認する作業を課しました。封筒にはわざと印刷ミスのあるものを混ぜておきます。確認作業は、封筒に印刷された郵便番号、住所、氏名の3項目を、あらかじめ配布されている住所録と照らし合わせて、正しいかどうかをチェックするものです。被験者は多重度1(1人のチェック)から、多重度5(5人のチェック)までの5段階のグループに別れ、各グループ20組で実験しました。
この実験データによれば、ダブルチェックによってミス検出率は最大 1.63 倍(55% → 90%)と大きく上昇しています。
また、最小でもミス検出率は 1.14 倍(35% → 40%)の上昇をしています。
状況によって効果はまちまちながら、効果はあるようです。
上記のデータによると、ダブルチェックによって改善しています。しかしすべてのケースで大きく改善するわけではありません。
あなたの仕事でどの程度効果が出るかは、この実験のように測定してみないと分かりません。
ダブルチェックの精度は長続きしない
ではミス軽減のためにダブルチェックのワークフローを導入したとしましょう。その効果はどの程度長続きするでしょうか?残念ながら、この効果は長時間維持できないという研究結果 (*2) があります。
橋本邦衛博士は「意識フェーズ」と「エラー発生率」の関係性を以下のようにまとめています。
フェーズ | 意識のモード | 生理的状態 | エラー発生率 |
---|---|---|---|
0 | 無意識、失神 | 睡眠 | 1.0 |
Ⅰ | 意識ぼけ | 疲労、居眠り | 0.1 以上 |
Ⅱ | 正常、リラックスした状態 | 休息時、定例作業時 | 0.01~0.00001 |
Ⅲ | 正常、明晰な状態 | 積極活動時 | 0.000001 以下 |
Ⅳ | 興奮状態 | 慌てている時、パニック時 | 0.1 以上 |
<引用元:https://www.indsys.chuo-u.ac.jp/~nakajo/open-data/Healthcare_Errorproofing2.pdf>
ワークフロー導入直後は積極的にチェックを実施しますが、それが定例作業になる過程で、徐々に「フェーズⅢ」から「フェーズⅡ」に移行してしまいます。
また逆にプレッシャーを与えすぎると「フェーズⅣ」に移行してしまい、なおさら精度を落としてしまいます。
このように、「ダブルチェックをすれば安心」とは行かない、というのがお分かりいただけるかと思います。
- ダブルチェックは、ある程度効果が出る
- その効果は長続きしない
- 参照 -
*1 : 島倉大輔・田中健次(2003):人間による防護の多重化の有効性、「品質」、33、〔3〕、104-112
*2 : 橋本邦衛(1984):「安全人間工学」、中央労働災害防止協会
しかし、ほぼ効果は無いです。それどころか逆効果を生む事が大いにあり得ます。トリプルチェック以降は行わない方が効率的でしょう。
先ほど抜粋した田中健次教授の実験データは、実は続きがあります。
2 人でチェックするよりも 3 人でチェックする方が精度が落ちているケースもありますよね。
田中教授も前述のページで以下のようにおっしゃっています。
多人数でチェックを行うと、 1 人あたりのやる気が下がります。
これを社会心理学的には「社会的手抜き」と呼びます。他にもリンゲルマン効果、フリーライダー(ただ乗り)現象、社会的怠惰とも呼ばれています。
トリプルチェックを行うと、この「社会的手抜き」の理論で作業精度が下がります。結果的に「 1 人でチェックしたほうがマシ」な結果となる危険性が高まります。
「社会的手抜きを防ごう」と社会心理学に逆らうのもおススメできません。たとえば手抜きを防ぐためにキツいペナルティを課して緊張感を持たせると、先ほどの橋本邦衛博士が言う「意識フェーズⅣ」、パニックや恐慌状態での作業となり精度が低下します。
つまりトリプルチェック以降は効果が低いので行わないのが適切かと思います。
それについては、以下エントリで詳しく説明いたします。
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トリプルチェック以上はどの程度効くのか?
ダブルチェックが一定の効果があるとすれば、トリプルチェックすればさらにミスが防げるのではないか? 一般的な感覚ではそう思いますよね。しかし、ほぼ効果は無いです。それどころか逆効果を生む事が大いにあり得ます。トリプルチェック以降は行わない方が効率的でしょう。
先ほど抜粋した田中健次教授の実験データは、実は続きがあります。
<引用元:http://www.medsafe.net/specialist/40tanaka.html> |
2 人でチェックするよりも 3 人でチェックする方が精度が落ちているケースもありますよね。
田中教授も前述のページで以下のようにおっしゃっています。
重要なことは、状況によっては3重、4重にすることが逆効果になる可能性もあるということです。
多人数でチェックを行うと、 1 人あたりのやる気が下がります。
これを社会心理学的には「社会的手抜き」と呼びます。他にもリンゲルマン効果、フリーライダー(ただ乗り)現象、社会的怠惰とも呼ばれています。
トリプルチェックを行うと、この「社会的手抜き」の理論で作業精度が下がります。結果的に「 1 人でチェックしたほうがマシ」な結果となる危険性が高まります。
「社会的手抜きを防ごう」と社会心理学に逆らうのもおススメできません。たとえば手抜きを防ぐためにキツいペナルティを課して緊張感を持たせると、先ほどの橋本邦衛博士が言う「意識フェーズⅣ」、パニックや恐慌状態での作業となり精度が低下します。
つまりトリプルチェック以降は効果が低いので行わないのが適切かと思います。
- トリプルチェック以降は効果が低い
- 逆効果になるケースも多い
エラープルーフ化の具体的方策
ではダブルチェックやトリプルチェックではなく「エラープルーフ化」をする、というのは具体的にどういうことでしょうか?それについては、以下エントリで詳しく説明いたします。
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